iroha Compass とは

iroha Compassは自律的な学習、深い学びを支援することを目的としたシステムです。従来のeラーニングシステム(LMS)は、先生が主体となった教材配信型のシステムが中心でした。iroha Compass は、学習者が主体となって自律的に学習を進める新しい形態のeラーニングシステムです 。

一般的なeラーニングシステム(LMS) 自律学習支援システム (iroha Compass)
設計思想 教授パラダイム 学習パラダイム
主体 先生 学習者
学習の目的 知識、技能の習得 判断力、思考力、表現力の向上
学習態度 受動的 能動的
学習対象共通かつ決められた学習テーマ一人ひとり個別の学習テーマ
学びの個別化
必要とされる機能 ・ 学習コンテンツ、コースの作成
・ 受講割当機能
・ テストの作成
・ 実施機能
・ 学習履歴の分析機能
・ 学習テーマ(学習目標)、課題の作成機能
・ 学習進捗の更新機能
・ 学習ノートの作成機能
・ 自身の学習状況の表示機能
iroha Compass ホーム画面
iroha Compass ノート作成画面

開発の背景

 2000年代以降、ICTの発達により、学校教育や学習塾、社員教育、自己研鑽など、幅広い分野で、eラーニングが急速に浸透しています。また学校教育の現場では、from teaching to learning と言われるように、教授パラダイムから学習パラダイムへの大きなパラダイムシフトが起きつつあります。文科省も、学生の自らの思考を促す能動的な学習である、アクティブラーニングや深い学びを積極的に推進しています。
 このような流れにおいて、現在のeラーニングシステムに目を向けてみると、多くのシステムが教授パラダイムに基づいており、知識を得るプロセスと、理解度を確認するプロセスは大変充実しているのですが、その中間にある「自らまとめ、考え、答えをみつける」というプロセス、すなわち学習パラダイムに基づいた自律学習支援型のシステムが大変少ない状況にあります。また自律学習を行うためには、長年、モチベーションの維持が大きな課題となっておりました。

深い学び

 学習には大きく浅い学びと、深い学びがあるとされています。浅い学びは、ただ授業で単位を取るために、形式的な知識のみを暗記しようとする学習で、それに対して深い学びは、知識と知識、もしくは知識と自らの経験を結び付け、概念を理解しようとする学習です。浅い学びは外発的な動機付けが強く、深い学びは内発的な動機付けが強いとされています。また深い学びは、学習者自身がパターンや基礎となる原則を探すことや、学習者自身が学習過程を振り返ることが大切とされています。

浅い学び Surface Learning 深い学び (Deep Learning)
ただ授業で単位を取るために,形式的な知識のみを暗記しようとする学習 知識と知識,もしくは知識と自らの経験を結びつけ,概念を理解しようとする学習
外発的な動機づけが強い 内発的な動機づけが強い

進捗の法則

 組織の創造性研究で知られる Amabile 氏は、著書「進捗の法則」において、”社員の創造的なパフォーマンスを促すには、その人のインナー・ワーク・ライフ(感情、モチベーション、認識の相互作用)の質を高める必要がある。 インナー・ワーク・ライフのバランスを取るために最も重要なことは、有意義な仕事の「進捗」を着実に図ることである。そのような進捗を感じる頻度が増えれば増えるほど、知的労働者の生産性は長期的に高まる。” と述べています。
 これらのことは、組織における社員の創造性のパフォーマンスについて述べたことですが、学習においても同様のことが言える可能性があると考えています。進捗とインナーワークライフは互いを糧にしている。進捗はインナーワークライフを豊かにし、ポジティブなインナーワークライフはさらなる進捗につながる。また反対にどちらかが悪化するともう一方も悪化する。これを「進捗ループ」と呼んでいます。進捗は、人の認識、感情、モチベーションを向上させる大きな力があり、これをAmabileは「進捗の法則」と呼んでいます。

進捗ループ

インナーワークライフはこの進捗の法則と、触媒ファクター、栄養ファクターの3つの影響を受けています。触媒ファクターとは、明確な目標設定、自主性、十分なリソースの提供などで 仕事に直接関係のあるサポートです。それに対して、栄養ファクターとは、他者からの尊重、励まし、感情的サポート、友好関係など人間関係にかかわる感情的なサポートです。この3つの構成要素においてインナーワークライフに最も大きな影響を与えるのが進捗の法則であるとされています。

インナーワークライフの構成要素

創造技法

 一般に創造技法とは様々な問題を創造的に解決するための技法と定義されています。 人間の問題解決の思考には発散的思考 (divergent thinking) と、収束的思考 (convergent thinking) があり、発散的思考を行う創造技法としては、ブレインストーミングやマインドマップ、収束的思考を行う創造技法としては国内ではKJ法が広く知られています。 創造技法を学習に活かす試みは1980年代から行われ、特にグループによる協調学習の分野での活用が多く見られています。

マインドマップの例


 創造技法に近いものとして教育の分野では概念マップ(Concept Map)が広く知られています。概念マップは1970年代にJoseph D. Novakらが開発したもので、学生の科学的知識を表現する手段として考案されました。概念マップでは概念と概念をラベル付きの矢印で連結し、全体として上から下へと分岐していく構造となっています。見た目はマインドマップと類似していますが、マインドマップは一つのテーマを中央に設定し、中央から放射状に枝が伸びているのに対して、概念マップは、より多様な構造となっています。また概念マップも他の創造技法と同様に、創造性を促進する作用があるとされています。

概念マップの例

iroha Compass のアプローチ

 これらの状況を踏まえ、自律学習と深い学びを支援する為、自身の学習進捗を管理する仕組みと、ノート作成機能を組み合わせた、自律学習支援システム「iroha Compass」の開発を行いました。自律学習においては、モチベーションの維持が大きな課題となっていると述べましたが、iroha Compass ではその対応策として、Amabile 氏の「進捗の法則」を学びに取り入れるアプローチを採用しています。また深い学びを支援するため、創造技法を活用しています。

 具体的には何のために学習を行っているか(学習目標)、その為には何を行えばいいか(課題)、現在どのような状況か(学習進捗)を常に意識できるよう、学習目標・課題の設定、進捗の更新、進捗状況の確認を行う機能を搭載しています。また講義やテキストなどで得られた断片的な知識を、自らの知識に関連付けながら、原理原則の発見や、概念的な知識へと昇華させるための創造技法を用いたノート作成機能を搭載しています。

学習モデルにおける創造技法と進捗管理の役割