iroha Compass とは

 iroha Compass とは知識創造型学習を支援することを目的としたシステムです。学習者が自分の学習テーマや進捗を管理する機能と、知識・アイデアを整理するアイデアマップ作成機能を中心に設計されております。

一般的なeラーニングシステム(LMS)では知識を獲得することが主な目的となっておりますが、知識創造型学習システムは、一人ひとりが自分自身の学習テーマを設定し、主体的にアイデアを向上させることを目的としています。

一般的なeラーニングシステム(LMS) 知識創造型学習支援システム (iroha Compass)
設計思想 教授パラダイム 学習パラダイム
主体 先生 学習者
学習の目的 知識、スキルの習得 アイデアの向上
学習態度 受動的 能動的
学習対象共通かつ決められた学習テーマ一人ひとり個別の学習テーマ
必要とされる機能 ・ 学習コンテンツ、コースの作成
・ 受講割当機能
・ テストの作成
・ 実施機能
・ 学習履歴の分析機能
・ 学習テーマ(学習目標)、課題の作成機能
・ 学習進捗の更新機能
・ 学習ノートの作成機能
・ 自身の学習状況の表示機能

知識創造型学習とは

 知識創造型学習とは他者とアイデアを共有し、対話を通してアイデアを向上させる学習です。学習者が自身の学習テーマに沿って能動的に知識を獲得し、既有の知識や経験と結合させ、新たな知識へ変換を行います。知識創造型学習は具体的な課題に取り組み、対話と実践を通してアイデアを向上させる実践的な学習とされております。

 アイデアの向上はアイデアの深さとアイデアの広さの2つの次元で表現することができます。アイデアを実現するために、思考を深化し、具体的かつ実現性の高いものへとアイデアを変換していくことをアイデアの精緻化と言います。また他者と意見を交換し、新しい視点を取り入れ、アイデアを変換することをアイデアの多様化と言います。アイデアの向上は、アイデアの精緻化とアイデアの多様化を繰り返しながら、アイデアの向上というベクトルにアイデアを変換していくプロセスであり、このプロセスにゴールというものは存在しないとされております。

開発の背景

 現在の学校教育制度は、18世紀後半の産業革命後に生まれ、工業化社会で必要な人材を育てることを目的として設計されました。この制度では、教師が標準化された知識やスキルを効率的に伝えることが重視され、工業化社会の発展に貢献しました。日本では明治時代に欧米の教育制度を参考に公的な学校教育が整備され、科学技術や産業の発展に重要な役割を果たしました。

 しかし、20世紀終盤になると情報技術の進化や知識労働者の増加により経済構造が変化し、「知識社会」へと移行しました。この社会では、単に知識を得るだけでなく、新しい知識を創造することが求められています。国際団体ATC21sは、これを「21世紀型スキル」として創造性、イノベーション、メタ認知、コラボレーション、ICTリテラシーなどを含む10のスキル群を定義しています。

 日本でも「アクティブラーニング」という学習者中心の新しい学び方が注目されています。これは、学習者自身が課題を設定し、新しいアイデアや知識を創り出すことを重視しています。文部科学省はこれを「主体的・対話的で深い学び」と表現しています。

 2000年代以降、インターネットやICT技術の普及により「eラーニング」が広がり、時間や場所を問わず低コストで学習できる環境が整いました。これにより、個々の学習特性や関心に応じた柔軟な指導が可能になり、個別化された学びが重要視されています。

 2020年のコロナ禍以降、特にオンライン学習の重要性が増し、多くの学校でLMS(Learning Management System)などが導入されていますが、これらの多くは知識獲得が主な目的としています。そこで他者との対話や情報共有を促進し、新しい知識を創造するための「場」として利用可能な「iroha Compass」を開発し、オープンソースソフトウェアとして公開いたしました。

TTPモデル

iroha Compassでは知識創造型学習における情報を、テーマ(Theme)、課題(Task)、進捗(Progress)の3つの階層(TTPモデル)で管理します。

学習者側の利用の流れ

 学習者は iroha Compass にログインし、学習テーマの設定を行います。次に学習テーマの学習を進める上で必要な課題を登録します。また課題に登録上で発生した成果を進捗として登録します。

ホーム画面には過去2週間分の自身のシステムの利用状況や、進捗の更新状況のグラフ、最近更新された進捗一覧が表示され、最近どれほどシステムを活用しているかを視覚的に把握することができます。一覧から前回の課題や進捗のタイトルをクリックすることによって、シームレスに作業を再開することが可能です。

アイデアマップ作成機能を使用して知識やアイデアを整理することが可能です。アイデアマップを作成するには、アイデアマップ作成画面でカードを追加し、断片的な知識やアイデアをカード形式で作成し、任意の場所に配置します。カードは色を変更したり、折りたたむことも可能です。通常のカードに加えて、Webカードも用意されており、外部サイトのURLを登録してWebページを開くことができます。また、リンク機能を利用してカード同士を結び付け、概念地図のように知識やアイデア同士の関連性を示すことができます。さらに、グループを追加することで、複数のカードをグループ化することも可能です。

 

指導者側の利用の流れ

指導者は管理システムにログインし、学習用のアカウントを発行して、学習者にアカウントを配布します。学習者が学習を開始した後は、課題や進捗を確認し、コメントやアドバイスなど個別のサポートを行います。また、必要に応じてグループの設定やお知らせの配信が可能です。